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「月に囚われた男」究極の低予算SF映画が描く、究極の単身赴任。

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 地球にとって最も身近な天体である、“月”を舞台に描かれる“SFサスペンス”。「月に囚われた男」(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)。やれ『CGだ!3Dだ!』と騒がしい映画界ですが、この映画は、古き良き時代の正統派SF映画を、思い起こさせてくれます。


 近未来、宇宙飛行士のサム(サム・ロックウェル)は、世界最大のエネルギー企業“ルナ・インダストリーズ”と契約して、月の地中に存在するエネルギー資源“ヘリウム3”を採掘して、地球へ送る任務に就く。契約期間は3年。その間サムは月面の基地にたった1人きりで滞在し、日々の業務をこなしていた。話し相手となるのは、人工知能を持つコンピューターの“ガーティ(CV=ケヴィン・スペイシー)”だけ。衛星の故障で、地球との直接交信も出来ず、愛する妻と産まれたばかりの愛娘の過去の通信映像を見て、気を紛らわす毎日。サムは常に孤独感に苛まれていたが、ようやくそんな生活からも解放されるときが近付いてきた。契約満了まで、あと2週間。サムは地球に還る喜びを、ガーティに語る。しかしある日の業務中、サムは月面車(ルナ・ローバー)で事故を起こして負傷、気を失ってしまう。やがて医務室のベッドで目覚めたサムは、そこで自分そっくりの男に遭遇する…。

 
 『月という広大な密室を舞台にした、SFサスペンス』とでも言いましょうか、何とも懐かしいテイストの、シンプルなSF映画です。フルCGなどが当たり前と化したこのご時世に、昔ながらのミニチュア模型を使って撮影された映像は、逆にある意味新しく感じられました。月が舞台になった映画というのも、そういえば久しくなかったような気がします。最近は火星だとか太陽、更にはもっともっと遠い“辺境の惑星(どこやねん?それ!)”なんかを舞台にしたSF映画がたくさん作られてるのに、一番近くにある“お月様”は、何となくその存在感が薄くなってしまっていた(映画界に於いて)ような気がします。そこへ持ってきて、月を舞台にした本作(原題は「MOON」そのものズバリ「月」!)は、その背景からして、古き良き時代の正統派SF映画を彷彿とさせる仕上がりとなっています。それもそのはず、本作の監督であるダンカン・ジョーンズ(何と、あのデヴィッド・ボウイの息子!本作が長編映画デビュー作)は、『昔のSF映画へのオマージュを込めて、この映画を作った』と公言しております。確かにサムとガーティの関係なんて、「2001年宇宙の旅」のボウマンとHAL9000そのものですし、月面基地や車両のデザインなんかも、最新の物とは少し異なる感じがしました。これは吾輩たちの世代からすると、とても懐かしく感じますが、若い方々がご覧になると、逆にとても新鮮に感じられると思います。この映画、製作費500万ドル&撮影期間33日!という製作費高騰が当然の昨今では、驚くべき清貧(?)な条件(「第9地区」でさえ3000万ドル。これでも安い!)で作られました。映像、脚本、演技、コスト…、色んな面から見て、非常に素晴らしい1本だと思います。

 ≪ネタバレ!≫になっちゃいますので、あんまり詳しくは書けませんが、本作でのサム・ロックウェルは見事です!1時間37分の上映時間、ほとんど1人芝居で演じきっています。しかも“1人3役”で…(あ、バレた?!)。スクリーンには彼しか映りませんが、まったく飽きさせません。そして“オスカー俳優”ケヴィン・スペイシーの“声の演技”が、サムの演技を盛り立て、更には非常にいいアクセントになって、この映画を良質なエンタテインメント作品に仕上げています。名優たるもの、やはり声だけでも素晴らしい芝居をするんですね~。いやあ、貫禄!

 前述したように、この映画の監督は“デヴィッド・ボウイの息子”ダンカン・ジョーンズです。彼は本作で長編デビューを飾り、“英国アカデミー賞・新人監督賞”や“ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞新人監督賞”など、たくさんの賞を受賞し、次代を担う映画監督として、今その才能に大いなる期待をもたれています。ところでこの方、大の親日家だそうでして、70年代以降何度も来日し『東京が大好き。いつか東京に住んでみたい』とまで言っちゃってるんだそうです。更に自称“オタク”だそうでして、黒澤作品、北野作品が大好きで、「攻殻機動隊」や「AKIRA」「エヴァ」の大ファンなんだそうです…。う~ん、何かわからんけどエエ奴や(^^;!妙に親近感が湧いちゃいますね。こう言われてみると、映画の中のあの凝ったミニチュアなんか、合点がいきます『ああ、そういう人やったんや』って(^^;。こういう人に、1回日本でSF映画を撮ってもらいたいですね。もちろん凝りに凝りまくったのを!

 
 しかし、月にたった1人で3年間なんて、ホント“究極の単身赴任”ですよね。どれだけ高い給料払われても、吾輩なら絶対イヤですな。単純な業務みたいでしたから、ロボットにでもやらせたらイイのに(あ、そう言ってしまうとこの映画実もフタもないか…)。せめてあと1人、いやあと10人ぐらい別に人間がいても、企業は充分採算はとれると思うのですが。月に1人ぼっちなんて、労働基準法的にも過酷過ぎます(あ、でもこの話にはウラがあるんですけどね…)!


 「月に囚われた男」は、ただいま東京、神奈川で公開中(まだ、こちらではやってません!)。これから順次全国ロードショー(因みに、京都&関西は4/24~)です。“オタクの2世監督”が撮った、素晴らしき低予算SF映画を、あなたも是非!映画館でご覧ください。


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by mori2fm | 2010-04-12 22:13 | 映画評 外国映画 タ行