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「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」すべて、ぶっ壊す。

 人生を選べずに生きてきた若者たちの、絶望的な旅の物語。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」(リトルモア)。『すべてをぶっ壊して“ここ”から抜け出す』彼等の決断を待ち受けていた結末は?


 ケンタ(松田翔太)とジュン(高良健吾)は、親のいない子供たちの施設で、兄弟のように育った。中学卒業後、工事現場で電動ブレーカーを使って、ひたすら壁を壊す“はつり”と呼ばれる仕事に就いた2人。低賃金、劣悪な労働環境、更には職場の先輩・裕也(新井浩文)による理不尽ないじめ。生き方も選べない2人は、ただ日々壁を壊し続けた。裕也の腹には、ケンタの兄・カズ(宮﨑将)がつけた、カッターの傷があった。その傷が原因で、カズは網走刑務所に入っている。ある日、ケンタとジュンはナンパに出かけ、カヨちゃん(安藤サクラ)というブスな女の子と出会う。その日以来、何故かジュンはカヨちゃん家に入り浸っていた。ある日の深夜、ケンタはジュンと仕事場へと向かった。カヨちゃんも付いてくる。ケンタはある決意を持っていた。『すべてをぶっ壊して、“ここ”から抜け出す』今夜、それを決行する…。


 どうしようもなく破壊的で、行く末に希望が見えない、救いのない物語。正直観ていて非常にシンドイ映画でした。ハッキリ言いますと、吾輩はこの手の映画は苦手です。ただ、この映画の主人公達(特に、ケンタとジュン)が抱えている、どうしようもない、持って行きどころのない、体の奥から湧きあがってくる“やるせなさ”や“憤り”と言った物には、痛いほど共感させられてしまいました。夢を語る機会さえ得られず、ただ日々を過酷に生き延びることしか出来ない。そんな生き方に、どんな意味があるのか?そんな疑問を持つことさえ許されなかった2人が、一縷の望みを持ち、現状をぶっ壊して生きることに賭けた。人間と言う生き物が持つ、云わば“生存本能”とも言うべきモノに目覚め、その先にわずかながらの光を見出し、生きていこうとした2人の思いが、ストレートにスクリーン越しに伝わってきました。決して楽しい映画ではありませんが、今の殺伐とした世の中に、風穴を開けるくらいのエネルギーを感じさせてくれる1本です。

 この映画、キャストに多数の“2世&血縁俳優”がキャスティングされているのも、見所です。主演の松田翔太クンは、言わずと知れた故・松田優作サンの次男坊。そしてカヨちゃん役の安藤サクラ嬢は、奥田瑛二安藤和津夫妻の次女。更にはカズ役の宮﨑将は、あの宮﨑あおいちゃんのお兄さんで、トドメに柄本明親子が共演(作中、絡むシーンはないのですが)しております。そして、この映画を撮り上げた、大森立嗣 監督は、麿赤兒氏の長男で、大森南朋のお兄さんです。まあ狙ったわけではないにせよ、よくこれだけ揃ったもんだなあ~と思います。でも決して吾輩、このキャスティングにケチをつけてるわけではございません。日本映画界の次代をしょって立つ世代の、実力を目の当たりに見せられて、正直嬉しく思いました。“蛙の子は蛙”と申しますが、彼等は正に“サラブレッド”です。更には“2世”とは関係ございませんが、高良健吾クン。いやあ、イイですね!彼は一体今年、何本の映画に出てるんでしょう?しかも、見るたびにキャラが全然違う…。イイ意味で、末恐ろしい俳優さんですね。そんな“これからの世代”の勢いを感じさせてくれる本作は、ホントに一見の価値ありだと思います。


 「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」は、6月12日(土)~全国ロードショーです。すべてをぶっ壊して生きようとする、若者たちの姿をあなたも是非!映画館でご覧下さい。

~追記~
 新鋭のシンガー、阿部芙蓉美が歌う、エンディング曲「私たちの望むものは」も、重くて心にグサっと響きます。この曲、原曲は“フォークの神様”岡林信康 御大の、40年も前(!)の曲です。

 
「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」の映画詳細、映画館情報はこちら >>

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』 - シネマトゥデイ 

ケンタとジュンとカヨちゃんの国@ぴあ映画生活

ケンタとジュンとカヨちゃんの国 - goo 映画
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by mori2fm | 2010-05-20 01:15 | 映画評 日本映画 か行