「手紙」“差別”と共に、生きていくということ。

 犯罪被害者の側を描いた映画は、過去にもあったと思われますが、犯罪加害者の側を描いたモノは、あまり例がないんじゃないでしょうか。「手紙」(ギャガ・コミュニケーションズ)。テーマがテーマだけに、観ていてとても重かったです。昨今の“泣ける映画”とは同じ括りに出来ない映画です。


 剛志(玉山鉄二)と直貴(山田孝之)は、両親の死後兄弟2人で助け合って生きてきた。直貴を大学へ行かせるために運送会社で働いていた剛志は、腰を痛め仕事を解雇されてしまう。何としても直貴の学費を捻出せんとした剛志は、ある資産家の家に押入り、誤って家人の老女を殺害。裁判で無期懲役の判決を受け、刑務所に服役する。残された直貴は大学進学を断念。就職するも“殺人犯の弟”というレッテルが付いてまわり、それが発覚する度に職と住まいを転々とすることを余儀なくされた。そんな中でも、獄中の剛志からは近況を知らせる手紙が、滞ることなく送り続けられてきた。やがてある工場に就職した直貴は、素性が知られないよう出来るだけ周囲との接触を避け、日々を過ごしていた。そんな直貴に同じ通勤バスに乗り合わせる由美子(沢尻エリカ)が声を掛ける…。

 前述しましたが、テーマがテーマですので本当に最初から重苦しいです。観ていてドンドン胸が締め付けられ、段々苦しくなってきました。そのくらい“差別による不幸の連鎖”が『これでもか!』と云わんばかりに続くのです。『かわいそう』などという一言では、到底済まされないような。しかしこの映画は“差別”を悪いことと認めながらも、『“差別”は決してこの世から無くならない。差別される側は、そのことも抱えて、生き抜いていかなければならない』と訴えているのです。吾輩、この考え方には目からウロコが落ちました。軽い気持ちで『差別反対』などと言うよりも、何倍も現実的で重みがある考えだと思いました。

 玉山鉄二・山田孝之は、それぞれ熱演です(ただ山田君のお笑い芸人は、悲しいほど面白くなかったですが…爆)。そしてこの映画にも登場“カメレオン女優(笑)”沢尻エリカ!この秋、一体何回彼女をスクリーンで観たことでしょう。この映画でも、その芸達者ぶりをイカンなく発揮してくれています。しかし、普段の彼女とのギャップが彼女の女優としての評判を良くしているように思えるのは、吾輩だけでしょうか?


 感動的なラストに、小田和正の「言葉にできない」が流れます。このまま終われば素晴しかったのですが、何故かエンドロール中に、もう1曲歌が流れます。個人的な感想ですが…『この歌、要らない!』…。

 しかし、この手の“人権”“差別”をテーマに扱かってるような映画は、一昔前なら学校を巡回して上映されてたと思うのですが、今や全国一斉ロードショー扱いですよ。いくら原作が人気作家・東野圭吾氏の作品とは云え。この事柄一つ取ってみても、今の日本映画の勢いを感じさせられますね。


 「手紙」は、ただいま絶賛公開中です。重い映画ですが、人間が生きていくために必要な、一筋の光を見せてくれるこの映画を、映画館で是非ご覧下さい。


「手紙」の映画詳細、映画館情報はこちら >>

  
[PR]
トラックバックURL : http://moricinema.exblog.jp/tb/4713655
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 『じゃあ映画を見に行こう』 at 2006-11-21 11:25
タイトル : 手紙
「手紙」(2006) シネコンで21時以降に上映してる作品ないか…と捜していたら、ありました21時45分。お客もカップル数組、合わせて20人弱。悠々と座っていたら、席をゴツゴツ蹴る奴らが。しまいには「好き☆」「好き☆」……ッカ~ッ!! うるさいよ後ろ(泣)!!! プロのお笑い芸人になる夢を持つ青年、直貴(山田孝之)。しかし彼は、夢や仕事、恋愛といったもの全てを諦めていた。それは兄の剛志(玉山鉄二)が、彼を大学に行かせるために強盗に入った家で殺人を犯し、刑務所に服役していたからだ… ...... more
Tracked from 山田孝之 at 2006-12-02 11:23
タイトル : 山田孝之
友達が山田孝之のことをキュートと言っていましたが、私もそう思います。愛らしいっていうのもそうなんですが、なんといっても個性的。山田孝之の出ているテレビ番組は何度でも見てしまいますよ。山田孝之の才能からすると、何も不思議ではないですね。皆さんも山田孝之のテレビ番組をみるべきですよー。山田孝之のセンスの良さが伝わってきますね。チェックしないといけませんよ。山田孝之のチェックは欠かすことなく!山田孝之のDVDを見るためにレンタル屋をチェックしました。たくさんあるので、たまりません。どうやったら山田孝之に会え...... more
Tracked from 黒澤明 監督映画 ~黒澤.. at 2006-12-04 08:26
タイトル : 黒澤明 監督作品一覧
”日本映画”を含む記事にTBさせていただいております。ご迷惑でしたら削除してくださいませm(_ _)m。日本が誇る世界的巨匠、黒澤明監督の映画作品を紹介します。... more
Tracked from KOBECCO at 2006-12-06 17:48
タイトル : たしかにくどいけど泣いた
無謀にもあの人が来られたのでのオフ会の前に  『手紙』 を見てました。 泣けた、けど最後シラけた。。。 感想、ようやくまとまりました(そうか)。 【ストーリー】  工場で働く20歳の武島直貴は、職場の人間ともまるで打ち解けず、人目を避けるように暮らしていた。それというのも唯一の家族である兄・剛志が、直貴の学費欲しさに盗みに入った邸宅で老婆を殺してしまったからだった。兄が罪を犯したのは、自分のせいだ。そう自責する直貴は、せめてもの償いにと服役中の兄から届く手紙に丁寧な返事を書...... more
Commented by panchan1121 at 2006-12-06 17:50
やっと記事になりました。
「ラーラーラー♪」とあのフレーズでもう目頭熱くした数日でした。

沢尻さんは、パッチギ!のときと近いイントネーションでしたね。
by mori2fm | 2006-11-20 00:50 | 映画評 日本映画 た行 | Trackback(4) | Comments(1)

我が娘にそっくりな“かぁたん” (from「カッパの飼い方」)


by mori2fm