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「SAYURI」薄幸芸者壮絶一代記…INふしぎの国ニッポン!

 “ハリウッドの撮る日本映画”として、公開前から注目されていた「SAYURI」(ブエナ ビスタ)。『主役の芸者役が、何で日本人じゃなくてチャン・ツィイーやねん?』とか『何で、全編英語でやらなアカンねん?』というような、様々な疑問を胸に抱きつつ(不穏だなあ)映画館へ行ってまいりました。


 貧しい漁村の娘・千代(大後寿々花)は、姉と共に都へ売りに出される。千代は“お母さん”と呼ばれる女将(桃井かおり)が取り仕切る置屋に引き取られ、姉とは離れ離れに。その日から芸者になる為の修行に従事させられる千代。しかし、置屋の売れっ子芸者“初桃”(コン・リー)の度重なるいじめに耐えかねた千代は、置屋からの脱走を決意するが失敗。故郷の親を亡くし、姉にも見捨てられた千代は置屋で“端女(はしため)”として生きていくしか他に道はなかった。或る日、寂しさから橋の上で泣いていた千代に、“会長”(渡辺謙)と呼ばれる男が優しく声を掛けてきた。会長の優しさに触れ、心をほだされた千代は、『いつか芸者になって、もう一度会長さんに逢いに行く』と心に決めるのだった。やがて千代(チャン・ツィイー)は、美しく成長するが、置屋では相変わらず女中として暮らす日々を送っていた。そんな或る日、初桃の商売敵である芸者“豆葉”(ミシェル・ヨー)が、千代を訪ねて置屋へやって来る…。

 まあね、いくら“ファンタジー”って言われても違和感は残りますよね。そりゃ、アチラの人に言わせると『ロシアやドイツを舞台にした映画でも、ハリウッドスターがキャスティングされ、全編英語でやってるがな』てな感じなんでしょう。ええ、それは認めましょう。「K-19」では、旧ソ連の原潜の艦内でハリソン・フォードリーアム・ニーソンは全編英語で会話してましたし、パリが舞台の「オペラ座の怪人」だって、全編英語でしたから。でもね、そこまで英語にこだわるなら、中途半端に日本語をかまさないでほしかったですね。そう、劇中BGでラジオから流れる日本語の歌、日本語のニュース。主要キャストとは関係ないところで交わされている、日本語による会話。更には軍の車が退避勧告を日本語で流している横で、英語による会話が行なわれている…。めちゃめちゃな感じがしましたよ。そんなことするなら、いっそ全編日本語で日本人キャストでやってくれればよかったのに~!てのが正直な感想です。コレ観て、アチラさんが『日本ってこんな国なんや~』てな風に勘違いされないことを希望しますわ。ファンタジーですよ、ファンタジー!まあ、アメリカから見れば、『日本も中国も同じアジアなんだから…』くらいの感覚しかないのでしょう。だから日本人じゃない、チャン・ツィイーや、ミシェル・ヨーが芸者をやってても何ら違和感はないのでしょうね(確かにチャン・ツィイーは相変わらずキレイでしたが…)。でもそんな風にくくられると、せっかくがんばっている渡辺謙さんや、役所広司さんが気の毒に思えてきます。
 
 ただ『舞台が日本である』ってことに拘らずに観ると、なかなか見応えのある映画には仕上がっています。さすが「シカゴ」ロブ・マーシャル監督。エンターテインメントとして、充分に楽しめる映像と音楽に仕上げています。この映画で描かれている戦中~戦後の日本の姿は、ある種豪華なテーマパークで再現されているような映像となって、観ている者をその世界へと引き込んでいきます。そういう意味では“ファンタジー”と言える映画だと思います。
 今回キャスティングで一番得をしたのは、桃井かおりさんではないでしょうか。彼女の本作の演技は、「ブラック・レイン」での松田優作さんを観た時のインパクトに匹敵するものを感じさせられましたから。あのキャラで、今後ハリウッドに進出していただきたいモンです。

 京都人である吾輩にとっては、観ている最中から『コレ絶対京都で撮影してるよな~。どこで撮ったんやろ?』と気になっていたのですが、エンドロールでロケ地を知って、唖然!そこには“KYOTO YOSIMINE TEMPLE”の文字が…ウソ~!善峰寺てか?!地元やんか!いつ来てたのよ?全然知らんかったわ…。


 「SAYURI」は、ただいま全国ロードショー公開中です。日本のような日本でないような、不思議の国“ニッポン”を舞台に繰広げられるハリウッド・ファンタジーを、映画館で是非ご覧下さい。
by mori2fm | 2005-12-19 22:34 | 映画評 外国映画 サ行