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「硫黄島からの手紙」日本人として、人間として、この映画を見逃してはいけない。

 クリント・イーストウッド監督、渾身の“硫黄島2部作”第2弾。「硫黄島からの手紙」(ワーナー・ブラザース)。61年前、日本の領土で繰り広げられた激戦を日本人俳優をキャスティングして、ハリウッドが撮る…。この事象だけでも映画界にとって画期的なことだと思いますが、果たしてどのような映画に仕上がったのでしょうか?


 第2次世界大戦末期、戦況悪化が著しい日本軍は、硫黄島を本土防衛の最終ラインに設定し、アメリカ軍の侵攻を阻止しようとしていた。しかし当地では、配属された西郷(二宮和也)等の兵隊達は、作業として従事する塹壕掘りに確たる意味を感じられず、島の厳しい自然環境も相まって、士気は決して高いものではなかった。そんな折、硫黄島に陸軍中将・栗林忠道(渡辺謙)が最高指揮官として着任。アメリカの国力を脅威と感じている栗林は、それまでの精神論を中心にした戦略を採らず、“味方の被害を最小限にし、如何に敵にダメージを与えられるか”に最適な戦略を練り上げていく。この栗林のやり方に、伊藤中尉(中村獅童)等、古参の上級仕官は反発する。やがて栗林は、同じく硫黄島に着任した西中佐(伊原剛志)から、連合艦隊が壊滅したことを聞かされる。海からの支援を期待できず、孤立したも同然の硫黄島。栗林は、これまで日本軍が常套的に行なってきた“水際での上陸阻止”を主眼とした作戦を止め、硫黄島全土を巨大な地下要塞にし、アメリカ軍を食い止め、1日でも長くこの島を死守することを決意する…。


 事前に心配していたような“「SAYURI」状態(=全篇、英語)”ではなかったことに、先ずホッとしました。で、観ているうちに『ホントにこれは、ハリウッド映画なのか?』と思えてきました。これまでのハリウッド映画が描いてきた“チョット変な国・日本”といった違和感は、今回まったく感じられませんでした。いや、イーストウッド監督お見事でございます。ただ歴史上に残る大激戦を繰り広げた後、悲劇的な結末を辿る日本軍の姿を克明に描き出しているにも関わらず、吾輩はこの映画を観て、“泣く”というところまでは至りませんでした。恐らく、この映画を日本人が制作・監督していたならば、もっと号泣するような映画になっていたと思います。その辺りが外国人が撮ったということで、この映画全体に流れるテイストが割とドライ(←この表現が、正しいとは言えないんですが)な感じがして、いい意味で内容を冷静に観ることが出来たような気がします。

 キャスティングされた日本の俳優陣も、その抜擢に応える演技を見せてくれます。渡辺謙さんは、もう国際派スターとしての貫禄充分ですし、二宮君(役柄的には、若すぎるかな?とは思いましたが…)に伊原さんもそれぞれに、極限状態における日本人の心をスクリーンに描き出してくれます。

 
 今から61年前に、日本の領土で繰り広げられた激戦…。今現在、この国に生きる人間として、この戦いは決して忘れてはいけません。何故なら、その時そこで戦った多くの人達が払った犠牲の上に、今日の我々の繁栄が成り立っているのですから。そのことを、外国人であるイーストウッド監督が、気付かせてくれました。この映画を観て、細かい描写や思想面などで色々と思いをお持ちになる方もおられるでしょう。しかし、そういった点を度外視して尚余りある賛辞を贈りたいくらい、この映画はエポックメーキングな1本だと思います。映画界の各賞でもノミネートされたり、既に受賞したものもあったりと、アカデミー賞も視野に入れて行けるのではないでしょうか?別に賞を獲ってほしいと思っているわけではなく(いや、獲れればそれはそれで素晴しいことなんですが)、それだけ話題になるとより多くの人が、この映画について知ることになるので、そういう意味でも健闘してもらいたいですね。


 「硫黄島からの手紙」は、ただいま全国大ヒット公開中です。日本人として、人間として、61年前の戦いを忘れないためにも、記憶に焼き付けるためにも、是非映画館へ足をお運び下さい。



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硫黄島からの手紙@映画生活
 
by mori2fm | 2006-12-18 01:11 | 映画評 外国映画 ア行