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「オール・ザ・キングスメン」今の日本にピッタリ?

 “談合”“汚職”“政治の私物化”etc etc…。昨今の日本の地方自治が抱える問題点の数々。「オール・ザ・キングスメン」(ソニー・ピクチャーズ)。この映画は、そんな現在の日本にとって、非常にタイムリーな内容が描かれているような気がします。


 1949年、ルイジアナ州の小さな町・メーソン。新聞記者・ジャック(ジュード・ロウ)は、郡の出納官・ウィリー(ショーン・ペン)と出会う。ウィリーは、『学校の建築工事に談合の疑いがある』と訴えるが、誰にも相手にされない。しかし、その学校で欠陥工事が原因の事故が起き、児童が死亡する。ジャックはこのことを記事にし、ウィリーの訴えが正しかったことを世間に知らしめる。やがてウィリーのもとに州の役人・タイニー(ジェームズ・ガンドルフィーニ)がやって来て、ウィリーを次の知事選挙の候補として出馬させる。しかし、それは対立候補の票を割る為に有力候補陣営が画策した物で、ウィリーは単なる当て馬だった。そのことに気付いたジャックは、ウィリーに真実を告げる。ウィリーは、それまでの演説原稿を破棄し、“不正を憎む、貧しい役人”という自らの思いと言葉で有権者に語りかけていく。やがてそれは大きな力となり、ウィリーは知事選挙に勝利するのだった。それから5年の月日が流れ、ウィリーの知事としての権力は絶大な物になっていた…。


 『不正を憎んでいた男が権力の座に着き、いつしかその亡者と化していく』よくあるお話です。日本だけでなく、これは全世界共通でいえることでしょう。権力の中枢にいながら、公明正大でい続けるというのは、なかなか難しいことだと思います。この映画の主人公のウィリーも、最初は弱者の側にいるのですが、やがては権力の波にのまれ、その魔力に溺れてしまいます…。て、感じなんでしょうが、残念ながらこの映画、ウィリーが権力の側に堕ちていく様が、あまり描かれてないんですよね。選挙に勝った後、いきなり5年が経ってしまいますので、何でそこまで悪くなったか?がイマイチよくわかりません(実際に賄賂を受取ったとかいうシーンが出てこないので)。選挙前に弱者の側から言ってたことは、知事になってからの政策にも反映されていたように感じられるので、判事から弾劾されるという話が出てきたときも『コイツ、そんなに悪いことしてるか?』と思ったのが、吾輩の正直な感想です(そりゃ、『酒を飲むようになった』とか、『女グセが悪くなったとか』はあるんですけど。それって、権力や政治には無関係でしょ?)。その辺をもう少し掘り下げて描いてくれれば良かったような気がします。大河ドラマなんですから、もう少し上映時間が長くても(2時間8分では、モノ足りん!)問題ナシでしょう。ひょっとしてそんなところが、アメリカで大コケしてしまった要因の一つかも知れませんね。


 ただこの映画、キャスティングは秀逸です。ショーン・ペンの狂気を孕んだ演技は、観る者を圧倒せんばかりですし、ジュード・ロウの控えた演技も見事。そしてわずかな出演で、その存在感を強烈にアピールするアンソニー・ホプキンス。“動”のショーンを“静”で受ける貫禄が素晴らしいの一言!この男達の共演に、無垢で可憐でありながら、やがて汚れていってしまうジャックの思い人・アンを演じたケイト・ウィンスレットと、政治(権力)の世界で生きる女・セイディの悲哀を演じたパトリシア・クラークソンが絡み、非常に濃厚な人間ドラマが繰り広げられます。うん、こんな展開ならホントにもう少し長くても良かったと思いますよ。惜しいな~!


 「オール・ザ・キングスメン」は、4月7日(土)から全国ロードショーです。地方自治が山ほど問題を抱えている今こそ、この映画を是非映画館でご覧下さい。


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オール・ザ・キングスメン@映画生活
by mori2fm | 2007-03-23 21:54 | 映画評 外国映画 ア行